コンビニでコーラを買って帰る途中で、チラシみたいなのが落ちていたのです。放っておけばよいものを、ついつい拾ってしまったわけですよ。そしたら、チラシではなく、封筒だったのです。
拾ってしまった以上、ポストに入れに行かねばなるまいと覚悟したのですが……
「これは郵便物ではありません」と書かれています。たまに届くことのある、郵便局以外の運送会社によるメール便だったわけです。しかも、「お問い合わせは日曜日、祝日を除く9時から18時まで」と書いてあります。拾ったのは土曜日の夜です。つまり、日曜日の間、こちらで保管しておく必要があります。月曜日に電話をかけて、事情を説明して、運送会社が取りに来るのを家で待って、わざわざ拾っていただきありがとうございましたとかなんとか言われて、微妙に気まずい雰囲気を味わう必要があるのです。もう、頭がくらくらします。
宛先まで持って行こうかとも考えましたが、徒歩10分はかかろうかという微妙に遠い距離。ポストに入れるところを見られて、こちらは運送会社でも何でもありませんから、封筒を取ったとかなんとか、逆にわけのわからない言いがかりをつけられる可能性もないとはいえません。ものすごく被害妄想っぽい考えですが、本音は徒歩10分が面倒なだけです。
八方塞がり。実に面倒なものを拾ってしまいました。このまま、そっと道に置いておこうかとも思いましたが、拾ってしまった以上、それはさすがに人としてどうかと思います。単なるチラシならゴミ箱に入れておけば済む話ですが、宛先が書いてある以上、どうにもなりません。旅行会社からのダイレクトメールっぽいのですが、もしかしたら、宛先の人がめっちょそのダイレクトメールを楽しみにしているかもしれませんし、宛先の人がそのダイレクトメールを見て、旅行の申し込みをして、その申し込みで最小挙行人数にどうにかこうにかはまって、他にも楽しみにしていた人が旅行に行けるようになるかもしれないのです。そう考えると、このダイレクトメールが届かないだけで、いろんな人に影響が出るわけです。
ダイレクトメールを届ける運送会社も大変です。問い合わせ先に電話を入れるということは、本社全体で情報を共有することになります。そうなると、まず、配達する人が怒られます。怒られるぐらいであれば良いのですが、そういうわけにもいかないでしょう。配達を頼んだ旅行会社に報告とかになったら、運送会社は今後、旅行会社からの受注を失うことにもなりかねません。そうなると、責任問題に発展し、配達する人は解雇されてしまうかもしれません。配達する人には妻子がおり、住宅ローンを抱えていて、しかも子どもは受験を控えているかもしれません。家族全員の人生が狂うことになります。それよりも、顧客を失った運送会社が売上減少により倒産するかもしれません。となると、従業員全員の人生が大きく狂うことになります。
ダイレクトメール1通で一体どれだけの影響が出るのか、考えるだけでも恐ろしいことです。
たくさんの人の人生を狂わせる可能性を秘めたダイレクトメールを手に、どうしたもんかと悩みまして、かといって片道徒歩10分の距離を歩くのも面倒だし、困った私が取った方法は、コンビニに行って82円切手を買ってくることでした。切手さえ貼ってしまえば、郵便物として郵便局の人が配達してくれます。というわけで、ポストに投函しておきました。
「郵便物ではありません」と書かれている封筒に、なぜか切手が貼ってあって、これは何?と思われた方がいらっしゃいましたら、こういう事情がございますので、ご理解頂ければと思います。