夜、街を歩いていると、時折派手なネオンの宿泊施設を見かけるときがあります。ジェットバス設備がありますとか、宿泊者ドリンク無料とか、オンデ・マンドと謎の言葉が書かれていたりとか、やけに設備を充実させていますアッピールがすごくて、宿泊施設ではなく、レジャー施設ではないのかと思わせる勢い。女子会を開くなんてこともあるそうな。
そういう宿泊施設は、マリオット都ホテルや、ヒルトン大阪といったスカした名前ではなく、男爵、伯爵、ねこの気まぐれ、べんきょう部屋、すしやのとなり、バナナとドーナツ、かばのおいしゃさん、吉田御殿、その他もろもろ、バリエーション豊かなネーミングとなっており、じつにもんにょりするのです。
そんな宿泊施設の入り口に、不思議な設備が備えられているのをご存知でしょうか。なにかのタイミングで「満」というマークがどどーんとあらわれるのです。「満」マークの下で、急遽宿泊せざるを得なくなったと思われる男女二人連れが立ちすくみ、女が「どこもかしこもいっぱいじゃないのよ!」と顔を真っ赤にして男を怒鳴りつけている光景をたまに見かけるのですが、前もって予約しておけばいいのにねと心の中でツイートするのですが後の祭りです。
ぐわぐわ団の読者の9割5分の方は、小学校低学年のお子さまなのです。あの「満」マークが何を意味するのか、お父さん、お母さんに聞くのは忍びないと思っているお子さまのため、責任ある大人として、今回きちんと教えてあげることにします。
あの「満」マークは「ミツルくんマーク」と言います。宿泊施設ですから、誰かが泊まっているのは当然なのですが、特に宿泊施設にとって大切なお客様であるミツルくんが泊まっている時に「満」の表示をすることになっています。ミツルくんが泊まると、他の宿泊者は全員、追い出されてしまいます。それぐらい、ミツルくんは大切なお客様なのです。
ミツルくんがどのような人物なのか、それは私にもわかりません。宿泊施設の方々もミツルくんの存在に関しては、誰一人として口を開いてくれません。風の噂では、アラブの石油王のご子息であるとか、東京ディズニーランドに行きたかったのに見つかってしまって強制送還されてしまった外国の要人であるとか、さまざまな噂が流れているわけですが、答えは得られていません。ただ、ミツルくんが泊まりに来たという表示だけは、しっかりしないといけないようです。
ミツルくんが誰かを調べるって?宿泊施設の前に張り込んで出てくる人を片っ端から写真に撮るって?そんなことをしてはいけません!えらいことになります。合掌。