字面の通りなんですが、まあ聞いてくださいよ、奥さん。
歯医者さんに行ったんです。「歯の神経が死んでいると思います。治療しないといけませんね。」4年前に治療した歯の神経が、私の知らぬ間にお亡くなりになっていたのです。痛みも何にもなく……というか、確かに一時期めっちょこ歯が痛い時期があったのですが、ちょうどその時がストレスMAXの時期だったのと、ストレスから解放されたと同時に痛みも消え去り、その後は穏やかに過ごしていたのです。「嗚呼、ストレスからくる痛みだったのだ……、やはりストレスはいかん」と思っていたのですが、もしかしたらあの痛みは歯の神経の断末魔だったのかもしれません。
何はともあれ、神経が死んでいるせいなのか、歯の奥で細菌が悪さをして骨を溶かすという、聞いているだけで歯がうずくようなことになっているので、治療をせねばなりません。歯の神経が死んでいると聞いたので、告別式をせねばならんと思ったのですが、それよりもまず治療が先のようです。
「今から詰め物をした歯に穴を開けますが、麻酔はしません。」
「え?」
「万が一、神経が生きていたら痛いはずなので、その時は左手をあげてください。すぐに治療を中止しますから。」
「めっちょこ怖いですね、それ。」
「確率はかなり低いですけどね。」
このような会話がなされ、顔を布で隠されて、治療が始まりました。私の左手はもうチュイーンという歯を削る機械の音を聞いた瞬間にピーンと上にあがりそうになっていたのですが、いざ削り始めると痛みもなんにも感じません。先生の見立て通り、神経が死んでいたようです。嗚呼、やはり神経は死んでいたのか、麻酔をしなくてもよかったし、痛くもないからよかったよかった……いや、よくない、神経が死んでいるのに!と、よくわからないことを考えながら、とにかくされるがまま、歯をガンガン削られました。
歯医者さんの後に、ラーメン横綱でラーメンを食べてから散髪に行く予定だったので、ラーメン横綱のネギのことを考えているうちに治療は終わりました。
とくにオチはありません。こういうことがあったというだけの話です。合掌。