トリアージとは、大事故・災害などで同時に多数の患者が出た時に、手当ての緊急度に従って優先順をつけることです。
全ての患者を救うことが大原則の医療において、場合によっては治療しない選択もありえるトリアージというのは、大災害が起きて、お医者さんが全然足りないとか、病院が被災して治療したくてもできないといった、医療の需要と供給のバランスがぐちゃぐちゃなときに限って行われる行為です。
そして、そんなトリアージにおいて黒のタグをつけるということは、死亡、または生命徴候がなく、直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能な場合で、このタグをつけるというのは相当勇気がいることだろうなと思うのです。
「はい、あなたは黒タグで〜す♪」
「そんな殺生な!ワイはまだまだ元気でっせ!」
こんな軽い気持ちでできることでもないのです。
なぜ、このような話題を取り上げたのかというと、我が身に何かがあった時に「私のことはいいから、あの子を助けてあげてください!」みたいなセリフがさらっと言えたらかっちょいいな〜と、ふと思ったからに他なりません。ただし、このセリフを言う場合は絶対に自分も生き残らねばならないのです。というのも、「あの子を助けてあげてください!」と言って、その子が助かった後に私が死んでしまっていると、その子に重いものを背負わせてしまうことになるからです。
自分が助かるからこそ、あの子を助けてあげてくださいに意味があるわけで、自分が助からないのをわかっていて、あの子を助けてあげてくださいなどと言ってはいけないのです。それは、他人を巻き込んだ単なる自己満足でしかありません。しかも、極めてタチの悪い自己満足です。
それより、いつ災害や事故が起きてもみんなが助かるように、事前にガンガンに準備をしておくことのほうが大切です。トリアージはあくまでも最終手段ですし、お医者さんがたくさんいれば、みんなを治療することができますし、病院が被災してもビクともしなければ治療をすることができますし、それより何かが起きても誰も怪我をしないぐらいに万全に準備しておけばよいのです。
突然、何を言い出すのかと思われるかもしれませんが、本人が一番そう思っています。ご安心ください。合掌。