ぐわぐわ団

読んで損する楽しいブログ

『ひとりずもう』を読みました

本屋さんに平積みされていた『ひとりずもう』。

評判がめっちょこ悪い、さくらももこのエッセイ『焼きそばうえだ』を読みました」で紹介した『焼きそばうえだ』よりもちょっと前に書かれたエッセイです。そういえばこれは読んでなかったなと思い、ひょっこり手にとって軽い気持ちで読み始めたらヤバかった。さくらももこ、やっぱりすごい。

大人の事情か何かは知りませんが、小学館文庫で販売されていたこの本が今回、集英社文庫で改めて出版されました。おそらく、本屋さんの新刊のコーナーに行けば簡単に手に入ると思います。Amazonのリンクをはるまでもありません。読んだことがないのであれば、消費税込みで637円ですから、ささっと本屋さんに行って買いましょう。『ぐわぐわ団』の読者の方なら楽しんでもらえると思います。

内容はさくらももこの青春時代のエッセイです。とにかくダラダラと過ごしています。Amazonのレビューで唯一人、星ひとつの最低評価をしている人がこんなことを書いています。 

これは思春期の子に読ませる内容ではない。
「ダラダラしててもなんとかなるんだ」
そう思わせてしまう危険な内容でもあると思う。

いや、そうかも知れんけど。以前も書きましたが、さくらももこは聖人君子でもありませんし、この本は自己啓発本でもなんでもありません。ただただ、さくらももこの青春時代のエッセイです。 だから、ダラダラしているし、貧乏な好青年との出会いを夢みるし、勝手に片想いをして、勝手に片想いを終了するのです。文化祭に参加はしないが後片付けはするのです。

茶の間にゴキブリが出たりすると、それまで家族でくつろいでいたのに、急に全員立ち上がり、私は逃げまどいながら父にぶつかり、父は酒をひっくり返してパンツと畳を濡らし、母は「お父さんは役に立たない」と怒鳴りながら雑誌でゴキブリを叩き、それを見た姉が「あたしの雑誌でやったねっ」等とカンカンに怒るという、メチャクチャな状況になる。

この本に書かれている一文です。こんな文章が楽しめるのが、さくらももこのエッセイです。文章を楽しむ。そして味わうのが正しい。先ほど書いたとおり、とにかくダラダラしているのですが、それは問題ではありません。Amazonで星ひとつのレビューを書いた人は一体何を期待していたのか、むしろそれが知りたいと思います。

とはいえ、これだけでは『焼きそばうえだ』と変わりません。『焼きそばうえだ』と違って、この本をとにかくオススメする理由は、あとがきにあるこの一文です。

毎日、人の数だけ違う事が起こっている。同じ日なんて無い。一瞬も無い。自分に起こる事をよく観察し、面白がったり考え込んだりする事こそ人生の醍醐味だと思う。

文章を書くうえで大切なことが、ここにぎゅっと込められているような気がしてなりません。ぜひ、読んでみてください。合掌。