読んでもいない本のことをとやかく言うのはどうかと思いつつも、読んでもいないことを最初に言っておいたうえで、とりあえずとやかく言うのもアリじゃなかろうかと思ったので、とやかく言うことにします。実にうっとうしい始まり方です。
実家に帰ったときに、新聞をぼや〜んと眺めていて、この広告が目についたのです。
本屋さんで見かけたとき、帯に「つらい仕事ほど、人を成長させる」と書いてあって、ぶっちゃけ「うわぁ……」とドン引きしたことがあります。そうかもしれんけど、つらい仕事をして病んでしまったら、もっとつらい目にあいます。はっきり言って、精神的に病んでまですることって、この世にひとつもありませんからね。病んだら、なかなか治りませんからね。そこまでの覚悟を持って「つらい仕事ほど、人を成長させる」と言っているのか、この人は!と心の中で激昂したりするのです。伊藤忠商事の元会長で、中国の大使も務めたような人ですし、ご年齢も80歳とのことですから、こちらが何を言っても聞く耳なんて持ったりしないよな〜とは思いつつ。
顔の写真の横に列挙されている「主な内容」はこんな感じです。
- 腐ったリンゴは元に戻らない
- 空気を読んでも顔色は読むな
- 能力や適性に大差はない
- きみの評価はきみが決めるんじゃない
- 逆境が心を成長させる
- 夢や目標は働きながら作る
- 問題が多いことを喜べ ほか
実際に読んでいないので、とやかく言うのはどうかと思いつつも、本気で「うわぁ……」としか思えない。にも関わらず、やたらめったら評価が高い。Amazonのレビューなんかを眺めていても、「見出しを読み直すだけで刺激になる」とか、「辛い仕事から逃げてはいけない」とか、意識高い系の人たちのバイブルか何かか?と思うぐらいに持ち上げられています。
みなさん「成長」という言葉が大好きなようです。成長しなければいけない!成長するにはどうすればよいか!みたいな言葉がそこらじゅうに飛び交っています。でも、18世紀から19世紀にかけての産業革命までは人間って全然成長していないんですよ。産業革命以前の世界の経済成長率はほぼゼロの状態で1500年以上も続いていたのです。古代ローマ人と16世紀のイタリア人やイギリス人の生活はほぼ同水準だったのです。成長しだしたのなんてここ200年ぐらいの話で、長い目でみれば成長しているほうがおかしいのです。
にも関わらず、成長しなければいけない!と吠えるのは、私たちのご先祖さまへの冒涜ではないでしょうか。成長しないのが本来のあるべき姿なのです。少なくとも、つらい仕事を無理してすることはないと思うのです。
というわけで、気になっているけど読んでいない本の紹介でした。読むかもしれませんし、読まないかもしれません。合掌。