本屋さんで「何かよさげな本はないかな?」とふらふらしていたときに、目に飛び込んできたのがこちらの本です。
見た瞬間にビビビときました。昔、「ビビビ婚」という言葉が流行りましたが、松田聖子が2度目に結婚したときの言葉が「ビビビ婚」の由来のようです。ねずみ男ではありません。
それはそうと、『食えなんだら食うな』とは、なかなかに面白いタイトルです。表紙をめくると、カバーにこんな言葉が並んでいます。
・食えなんだら食うな
・病いなんて死ねば治る
・無報酬ほど大きな儲けはない
・ためにする禅なんて嘘だ
・ガキは大いに叩いてやれ
・社長は便所掃除せよ
なかなかにパワハラっぽい言葉が並んでいます。裏表紙をめくると、もっとすごい。
・自殺するなんて威張るな
・家事嫌いの女など叩き出せ
・若者に未来などあるものか
・犬のように食え
・地震ぐらいで驚くな
・死ねなんだら死ぬな
ぶっちゃけ、文字だけ見るとめちゃくちゃです。頑固爺が昔気質に凝り固まった価値観でゴリゴリ言いたいことを言うだけの、昔は良かった本か何かかと思い、これはもしかして逆に面白いかもしれないと思い、買ってしまいました。そんでもって、読んでいる途中です。
この本、もともとは昭和53年に発行された本の復刻版です。昭和53年といえば40年ほど前です。40年も前の価値観と今の価値観では違って当然だと思いますし、昔の価値観を知っておくのも悪くないかなと考え、悪く言えば斜に構えて読み始めたのです。そうしたらどうしたものか。
体罰に関して書かれている部分を一部引用します。
ことわっておくが、私はここで「体罰万能」をいっているのではない。なにがなんでも、体罰を加えよというのではない。(中略)人生の重大事を、子供に「識」として植えつけるには、言葉で補いきれない場合もあり得る。体罰は、大いに加えればいいのである。ただ報復はいけない。
「報復」というのは、子供が悪さをして、大人がカッと逆上して、思わず手が出ることを指します。「報復」はいけないとしっかりと書かれています。
一方、この本で紹介されている体罰の事例として、子どもが雀の子を拾い上げてひねり潰そうとした時に、子どもをきつくつまみ上げて「どうだ、痛いか。」「雀はもっと痛かったかもしれん。おまえが痛いように、雀も痛いのだ。わかったか。」と荒っぽいことをしたと書かれています。これは、わからなくもない。命の大切さを教えるための方法として理解できます。
意外と納得できるんです。むちゃくちゃなようで、きちんと筋が通っている。確かにその通りだと思ってしまう。古い価値観でぶん殴ってくる本だと思っていたのに、至極まっとうなことが書かれていて驚いているのです。
まだ、読んでいる途中ですが、面白い本を見つけたものだと思いました。
なんとなくですが、自由ネコさんっぽい。
『食えなんだら食うな』に、このような文章が書かれています。
自分より図体の大きい息子の大学受験に、ちょこまか蹤いていく母親がそれであり、卒業式まで「保護者」を必要とする風景がそれであろう。見苦しく、いつまでも成長した倅や娘につきまとっているよりも、傍にいてやらねばならぬ時期にはせい一ぱい保護してやり、あとはあっさり距離を置くのが、自然の理にかなっている。
昭和53年に禅僧の爺さんが同じようなことを書いているのです。自由ネコさんは禅僧なのかも知れません。合掌。