梶井基次郎の「檸檬」という小説をご存知でしょうか。

主人公が檸檬を紀伊國屋に置いて帰るという話なのですが、その檸檬が実は爆弾でどかーんと爆発してしまうという悲劇が描かれています。死者行方不明者は数知れず、檸檬の破壊力が裁判員裁判の争点となったのでした。梶井基次郎が何を考えてこんなわけのわからない小説を書いたのかわかりませんが、とはいえ三島由紀夫が「金閣寺」でお婆さんを襲う青年の話を濃厚に描いたことで私に大いなるトラウマを植え付けたことに比べたらかわいいものではないでしょうか。
日本の小説というのは明治時代に痰を発していますが、源流は「源氏物語 vs 平家物語」であり、源氏物語を書いた紫式部と平家物語を書いた紫芋部の壮絶な闘いです。光源氏が源氏のアイドルである一方、平家のアイドルは平清盛で「13人の鎌倉殿」で西田敏行が演じたように、濃厚でこってりした描かれ方をするのが通例で、ローラースケートを履いてどうやって歌っているのかさっぱりわからない光源氏に勝てるわけがない。口パクとか言ってはいけない。若いからローラースケートで滑りながら歌うことができるのだ。令和キッズは知らないだろうが、そういうことなのです。
それはそうと、阪神とソフトバンクの日本シリーズが終わってしまいました。ソフトバンクはもともとダイエー、その前は南海ホークスで、村上ファンドが阪神の株を買い占めた時に南海も買い占めようともしたけれども、岸和田だんじり祭りが怖くて南海には手を出さなかったそうです。とはいえ、南海ホークスは球団の身売りをせざるを得なくなり、当時ウハウハだったダイエーに買い取られたのです。そんなホークスとタイガースが日本シリーズで対峙するなんて夢のような話で、過去一度も「南海ホークス vs 阪神タイガース」の日本シリーズは行われたことがなかったのです。門田に対して小林が投げる、スタルヒンが投げて藤村が打つ、杉浦が投げて吉田義男がバッターボックスに立つなんて日本シリーズを誰もが夢見ていたというのに、今この令和の時代になって花開くとはどういうこっちゃ!猛省を促す。合掌。