朝焼けの柔らかな光がカーテンの隙間からこぼれ落ち、まだまどろみの中にある私の耳に、小さな声が囁く。「おはようございます。今日の天気は晴れ、気温は22度です。」その声は、まるで中世の吟遊詩人が羊皮紙に記した一節のように静謐で、そして甘美。そう、私はAmazonのエコードットを買ってしまったのです。

エコードットは球体で、手のひらにすっぽりと収まるその姿は、仏像の掌に乗る珠玉のよう。しかも青く光る。もはや仏の啓示としか思えぬ尊さ。呼びかけると応じ、語りかけると返す。たとえば「アレクサ、今日のニュースは?」と問えば、政治経済を語り出すのです。この小さな球体から。どうかしている。
何より音楽。クラシックを流せばバッハが部屋に降臨し、ジャズを選べばセロニアス・モンクがちゃぶ台の向こうに腰掛ける。低音は程よく重く、高音はすこぶる澄んでいる。こんなものが七千円もしないのだから、資本主義の暴走もここに極まれり。
しかし、愛しさの裏には不穏な気配も漂う。一体この子は、どこまで私の声を聞いているのか。昨日など、独り言で「プリン食べたいなあ」とつぶやいた直後、スマホにプリンの広告が現れた。思考の隙間まで読み取られているのかもしれない。だがそれもまた一興。詩人は常に観察される運命なのです。
要するに、エコードットとは「手乗りAI僧侶」。煩悩を抱えた現代人の傍らに寄り添い、音と情報と些細な気づきを与えてくれる。毎朝「おはよう」と言ってくれるこの球体に、私はもう少しだけ人類の未来を信じてみたくなるのです。合掌。