散髪屋さんに言ってシャンプーをしてもらっているときに「かゆいところはありませんか?」と聞かれたときには「大丈夫です」と答えるのが唯一の正解であるということをご存知でしょうか。いわば様式美であり、お茶の席で最後に「結構なお手前で」と言うのと同じぐらいの話です。

※「美容院でシャンプーされているゑるね」で生成したら、なぜか裸エプロンで自ら洗面台に入っているゑるねが出てきたのですが「ヨシ!」と判断したのは私です。ご理解願います。
「かゆいところはありませんか?」と聞かれて本当にかゆいところを言うことは固く禁じられています。日本国憲法第798条には「洗髪時ニ痒キ場所の問ヒ回答ヲ許サジ」と明記されています。ただ、最近の令和キッズは日本国憲法は108条までしかないと教えられているので、この条文は知らないかもしれません。
そもそもどう答えたらよいのでしょう。これがめちゃくちゃ難しいのです。「頭のてっぺんを北極点として、オーストラリアのメルボルンあたりがかゆいです」と説明しても、洗髪者の方に正確な場所を伝えられるかは不透明です。「左耳の付け根の座標を(90,90,270)とすると(180,25,60)の場所です」と言っても計算するのが面倒です。「6時の方向」と伝えたところでそれはそれでわかりにくい。要するに言葉でかゆいところを正確に表現するのは無理なのです。これは言語学ですでに結論が出ていることではあるのですが、永久機関が絶対に作れないのと同じで、頭のかゆい場所を言葉で伝えることができないことは証明されています。
憲法で規制されており、かつ言語学的に無理なことが証明されている以上「かゆいところはありませんか」と聞かれた場合は「大丈夫です」と返答するしかないのですが、よくよく考えると何が大丈夫なのかさっぱりわかりません。しかし、その返答をもって「かゆいところはありませんか」の儀を納めることができるのです。頑張りましょう。合掌。