私の父親は落語が好きで、家には落語が録音されたカセットテープがあふれかえっていました。何かに応募してると思えば、ぽんぽんと落語番組の公開録音のチケットが当たったりして、生の落語にも連れて行ってもらったり。お金を払って見に行かないのが微妙なところではあるのですが、ともあれこんな環境の中、私もすくすくと落語好きになったわけです。
大学の時、一時期落語研究会の方たちと仲良くしてもらったことがありました。その落研の先輩が「新婚さんいらっしゃい」の大ファンで、何がどうなったのか経緯はさっぱり覚えてないのですが、なぜか私が落研のみなさんに連れられて「新婚さんいらっしゃい」の公開録画に行ったことがあります。先輩が「今日は3回も三枝師匠がひっくり返った。実にいいものを見た!」と大興奮だったことをはっきりと覚えています。
そんな中、なぜか私も落語をすることになりました。着物なんて持ってないから浴衣でごまかして、高座に上がらされたというわけです。落研に入ったわけでもないのに。実際はめっちょこ困りましてね、何をすればよいのやら。そこで、私が選んだのが「桃太郎」という噺。短いけれども、話の展開が面白いし、出てくるのは父親と子どもの二人なので、演じ分けがしやすいのです。
どんな噺かといいますと、なかなか寝ない子どもに対して、父親が「桃太郎」の話を聞かせて寝かせようとするものの、なぜか子どもが「桃太郎」の話をして父親が寝るという話。これだけではさっぱりわかりませんよね。こればっかりは、ほんとおもしろいからぜひ聴いてもらいたいです。
落語らしくない落語なんですけどね、落語のとっかかりとしては、これ以上の噺はないんじゃないかという傑作です。ということで、おすすめの落語でした。合掌。