相方が風邪をひいてダウンしていた時のことです。
家の固定電話が鳴りました。
普段はうんともすんとも鳴らないどころか、たまにかかってきたかと思えば「高価買取致します!」の電話だったりするので、もはや固定電話なんていらんなぁと思いつつ、何となく契約を解約するのも面倒という理由で、家の固定電話がほこりまみれになっているのです。
そんな家の固定電話が鳴りました。
もちろん、用心深い相方のことです。受話器なんてとりません。留守番電話にしてあるので、相手が何か言うのを待つのです。
「あのー、宮田先生でっか?今日は欠席したいんですけど……」
そして、留守番電話の録音が終了。わけがわかりません。
とりあえず、放っておいたのですが、次の日にも電話がかかってきました。
「あのー、宮田先生でっか?今日は予約お願いしたいんですけど……」
昨日と同じ人のようです。お断りしておきますが、うちの相方は宮田先生ではありません。あまり自信たっぷりに言うことでもありませんが、とにかく宮田先生ではないのです、たぶん。
あまりにも「宮田先生」が続くので、相方は意を決して、相手に電話を入れたそうです。風邪をひいていて声が出ないというのに。健気なことです。
「……もしもし」
「宮田先生でっか!」
「いや、違うんですけど……」
「でも、宮田先生の電話ですやん。」
「???」
よくわからないことになっています。
「すいませんが、どちらにおかけですか?」
間違い電話のときは、相手がどこにかけたいのかを確認するのが最良の方法だったりします。
「◯◯◯の◯◯◯◯ですけど。」
うちの電話番号です。普通なら「こちらは◯◯◯の△△△△ですから、お間違えですよ。」と相手を諭してあげることができるのですが、相手がまるっこうちと同じ番号を口にしてきた場合は少々ややこしくなります。
「うちは◯◯◯の◯◯◯◯で同じ電話番号ですけど、宮田ではありません。」
「でも◯◯◯の◯◯◯◯ですよね?」
「そうですけど、宮田先生じゃないんです。」
「そんなら、宮田先生の電話番号は◯◯◯の◯◯◯◯じゃないの?」
知らんやん。相方の脳裏にはこの言葉がはっきりと浮かびました。風邪で声がでないというのに、親切心を出した結果が、宮田先生堂々巡りです。実に不憫。
「いややわぁ、宮田先生の電話番号やないなんて。」
知らんやん。
すったもんだの末、どうにかこうにかこちらが宮田先生ではないということだけは理解してもらえたのか、もらえなかったのか、相手のことはわかりませんが、電話を切り、すぐに着信拒否にしました。うちは宮田先生ではない。合掌。