ぐわぐわ団

読んで損する楽しいブログ

『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」』を読みました

発売前にやたらと話題になっていた本、さっそく読みました。

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」

「IT業界のサグラダ・ファミリア」ともよばれたみずほ銀行のシステム統合。発売前に「ヤバい本がでる」、「最恐のホラー小説」と言われていたのでわくわくしていたのですが、SEの方が血を吐いて倒れたとか、家に帰れないからやけになって住民票を会社に移したとか、デスマで死にかけた人多数とか、そんなことは書かれていません。

この本、構成がよくわからなくて、前半はみずほ銀行の新システムMINORIがいかに素晴らしいか、みずほ銀行はめちゃくちゃすごいことをしたか、そして最後にはみずほフィナンシャルグループの社長の自画自賛インタビューできれいにまとめた第一部、震災直後のシステム障害で大変だったことを淡々と書く第二部、合併直後のシステム障害で大変だったことをけちょんけちょんに貶しまくる第三部という三部構成になっています。

第一部だけを読んだら、苦難を乗り越える爽やかな青春小説みたいなノリなのですが、第三部は「ぼんくらが3人集まって、リーダーシップも発揮せずに現場任せにしたからエラいことになったんや。ワシら、前もって忠告してたのに、どアホが!」みたいな、とんでもない悪意というか、恨み辛み節を感じました。はっきり言うと、おもしろいのは第三部です。

ある外資系戦略コンサルティング会社のコンサルタントはこう漏らした。「米国でいくつも銀行合併を手伝ったが、今回は初めてのケースだ。なぜ統合するかという戦略が決まっていないからだ。」

こんな文章ひとつとっても、第一勧銀、富士銀、興銀の合併がしっちゃかめっちゃかだったのがよくわかります。確かに20世紀の終わり頃は、やたら銀行が合併しまくっていて、何がなんだかわからなくなったという時代です。どことどこが合併したのか、自分の取引銀行は何になったのかわからなくなってじいちゃんばあちゃんが困ったという時代です。戦略がなくても、とりあえず合併しておこうぐらいのノリだったのかもしれません。システムのことなど後回しになって、気がついたらぐちゃぐちゃになっていたということなのでしょう。

「ぐわぐわ団」も「負けいくさ」というブログを吸収合併しているので大変さは理解していますが、みずほ銀行から言わせると、そんなことと一緒にするなというのが正直な気持ちでしょう。合掌。