みなさんは「まわしまった」をご存知でしょうか。
力士のまわしが緩んだときに行司が一旦「待った」をして勝負を中断し、行司がぎうぎうとまわしを締め直すのです。
まわしがはずれたらエラいことになります。見えてはいけないモノが見えてしまいます。NHKは大相撲を生放送しているので、見えてはいけないモノが見えてしまった場合、見えてはいけないモノを全国の公共の電波にのせて放送してしまうリスクがあるのです。もしもの場合に備えて中継車の中には「モザイクの竜」という仕事師がスタンバイしており、まわしがはずれた場合には即座に「モザイクの竜」が鮮やかな手捌きで見えてはいけないモノにモザイクをかけることになっています。しかしながら「モザイクの竜」も今年で御年98歳、いつ大往生されるかわかりません。また、おそろしいことに「モザイクの竜」には後継者がいないのです。そのため、NHK関係者の中で「モザイクの竜」を死なせてはいけない、何かあったら大変だということで、NHK職員専用番組では毎日「モザイクの竜」の体温、血圧がテロップで常に流されるという事態になっています。不測の事態に備えて、NHK職員がソフト・オン・デマンドやムーディーズといった一流メーカーに日参し、モザイクのかけかたを教えてもらっているようですが、まだまだ「モザイクの竜」の足元にも及ばないようです。
そんなわけで、とりあえずまわしがはずれたら困るので、行司が力士のまわしが緩んでいたら取り組みを中断させて、自分でぎうぎうと締めるのですが、力士のまわしというのはものすごく硬く、巻くのにはとてもパワーが必要です。行司だけではどうすることもできず、呼び出しも一緒になってまわしを引っ張ってぎうぎうと締めるなんてこともあるぐらいです。締め上げているときに力士は恍惚とした表情を浮かべることもありますが、その表情はNHKで放送されることはなく、その場にいる人たちだけがその表情を見ることができると言います。合掌。