とんでもない量の赤えびをムシャコラと食べていたら、さくらももこさんの訃報が流れてきました。
「ちびまる子ちゃん」がとにかく有名ですが、私にとってさくらももこといえば『もものかんづめ』です。
前にも書いたと思うのですが、はじめて『もものかんづめ』を読んだとき、「文章で人を笑わせることができるんだ!」と衝撃を受けたのです。この『もものかんづめ』、単におもしろいだけではなく、何度読んでもおもしろいのです。落語みたいな感じといえば、おわかりいただけるでしょうか。コミカルではあるけれど、どこか突き放したような文体で、とにかく文章そのものが生きている感覚。何度読んでもおもしろいなんて、真似しようとしてもできるものではありません。
ブログを書きたいと思っているけど、どうやって書けばよいのかわからないという人に、私はドストエフスキーの『老人と海』を渡して「これを教科書にしなさい」と言うのですが、なかなか読みきってブログの糧とする人はいません。なんせ、私も読んでいません。ていうか、難しすぎて読めません。でも、『もものかんづめ』は教科書として最適ではないかと思うのです。
『もものかんづめ』の「その後の話」という一節に、こんなことが書いてあります。
私は自分の感想や事実に基づいた出来事をばからしくデフォルメする事はあるが美化して書く技術は持っていない。それを嫌う人がいても仕方ないし、好いてくれる人がいるのもありがたい事である。
初めて書いたエッセイ本で、大阿闍梨レベルの偉い坊さんが達観して書いたような文章がさらりと書いてあるのです。この文章こそが、文章を書くうえで大切なことだと思うのです。無理して美化をしたりする必要はなくて、ちょっとばからしくデフォルメしたりして、読む人を楽しませようとすることが、文章を読んでもらうために必要なのです。そして、それを嫌う人がいても仕方がないし、好いてくれる人がいればありがたい、という気持ちが長く文章を書き続ける秘訣ではないかと思うのです。
Amazonで調べてみたら、すでに『もものかんづめ』は売り切れていて「通常1~2か月以内に発送します。」なんてことになっています。電子書籍にはなっていないので、本屋さんに探しに行くほうが入手しやすいかもしれません。
本当に亡くなるには早すぎますね。とても残念です。合掌。